「えー、この度、新しくFoxFireの宣伝担当になりました斉藤です。」
2002年10月。僕はフォックスファイヤー宣伝担当になった・・・。ずっとやりたかった仕事ではあるが、突然の話で戸惑いを隠せない。前部署での業務もやっと軌道に乗ってきて楽しくなってきたばかり。チョット残念な気もするが「新しい物好き」僕にはもってこいの職務である。
さて、今回のロケはいわば私の「初ロケ仕事」。右も左もわからない。だから、テンションもいつになく高い。何が起こるかわからない不安と、これから出会う人達を胸に、ただただ、信念だけを心にロケに挑む・・・。さあ、おっぱじめるかぁ!
<初ロケ仕事は北海道に決めたぁ!>
今回の北海道ロケに固執したのは「極寒地トラベル」シーンを撮影したかったから。中でも、釧路湿原にこだわった理由がある。日本で最初のラムサール条約登録湿地として指定された国内最大の湿原であること。フライフィッシャーマンなら一度は見てみたい、わが国最大の淡水魚イトウが生息する土地でもある。日本を代表するこの土地でロケを行うことで、いつになくリアルで壮大なシーンが撮れるような気がしたのだ。また、時期的な問題もあった。一般的にアウトドアウエア業界では、3月に来年の秋冬ウエア展示会、その翌月の4月には、肌寒い真冬のシーンを撮影しなければならない。僕たちにとって、そんな都合の良いパラダイスは北海道しかなかったというのもある・・・。
そんな考え抜かれた緻密な計画にもかかわらず、一部の仲間には「自分が行きたいからだ」と言う方々もおられる。「そんな馬鹿なことを・・・」と思いながら、僕のニヤツキはおさまらない。かっかっかぁ~!内緒だけど・・・。
~だって、やっぱり北海道に行きたいんだもん・・・~
<北海道ロケに向け、いざ出発!>

今回、ロケ隊は総勢6名。運営部隊(東京からの巡業部隊)はカメラマンの望月氏、ディレクターの井上氏、クライアントの僕。モデル部隊(北海道地元部隊)は末沢氏、千葉氏、小島さん、以上6名の隊員が集結することになっている。地元部隊のモデル軍団たちはそれぞれ予定があるため、撮影シーンによって集結日がばらばらだ。しかも、全員が初対面になるので、いい表情で最高の作品を創りたい私としては、モデルさんへの気遣いに気が入る。飛行機の窓越しに富士山を見ながら、いざ北海道、道東へ・・・。

末沢氏と僕 |
まず、一人目のモデルとの出会いは釧路空港で始まる。
釧路空港到着ロビーで仁王立ちの長髪の大男が立っている。FoxFireの赤いフリ-スを身にまとい、堂々と胸を張っていた姿は今でも恐ろしさがこみ上げる・・・。これがモデル兼ガイドの末沢氏との初対面である。彼は道東を中心に活躍中のフリーカメラマン。危険を顧みず、人が普通入れないような厳しい大自然の撮影ポイントに挑み、この道東にこだわり写真を撮り続けている。FoxFireの愛好家だと聞いているが、会うのも顔を見るのも初めてだ。不安はあったが、「~べぇ」という独特の北海道弁を巧みに操り、姿は「熊」に似ているが!?ピュアで気さくな彼とはすぐに溶け込むことができた。
<美しい釧路湿原と夕日>

初日のロケは、「夕日に照らされる釧路川のフォトレック」シーン。ここは、釧路湿原を一望できる「細岡展望台」。
(*1)地元でも有数のビューポイントである。ちょうどこの時期、蛇行し水量のある釧路川越しに赤く美しい夕日が沈む。それを撮影するカメラマンをモデルとして、よりリアルにかっこよく、美しく押さえたかった。
日の入り2時間前に現地に着き、準備をしながらテスト撮影を繰り返す。その間、カメラマン望月氏の後ろで、自分のカメラで撮影する僕。素人の僕だがプロと同じアングルで撮影していくと自然と上手くなった気分になる。「楽しい!ああ楽しい」大自然を目の前にモデル撮影なんて初めて味わう気分である。ドンドンのめりこんで行く僕。気がついたらカメラマンの真ん前。「そこ邪魔!どいてぇ~!」クライアントの僕が、怒られたのは言うまでもありません・・・。
末沢氏のプロカメラマンとしてのリアルな視線と撮影ポーズには本当におどろいた。睨みを利かしファインダーを覗く。腰をしっかり固定し、脇を締めたそのポーズは、素人カメラマンモデルでは不可能な息使いを伝えてくれた。
思えば、ロケの中で一番天気が良く、本当にきれいな夕日だった・・・。
今日はこれでロケ終了。宿泊は弟子屈にある川湯温泉。ここをベースキャンプに5日間のロケが行われる。今日は初日から調子がよかった。大好きな北海道よ、ありがとう。
今日はゆっくりと温泉に浸かり明日もまた頑張ろう・・・。

キタキツネにも会えるかも・・・。 |
*1)細岡展望台へのアクセス
列車・・・・JR釧路駅~JR釧路湿原駅 所要時間約18分(細岡展望台まで徒歩7分、約400M)
車・・・・・釧路~国道391号線~達古武細岡展望台入り口看板から左折~展望台駐車場(所要時間約40分)
<凍りつく早朝フォトレックロケ>

AM4:30にロビー集合。昨夜、疲れて早く寝たせいか、目覚めがとても良い。うまい空気と広大な大地。自然に体を馳せるとこんなにも健康体でいられるのであろうか・・・。 今日の撮影は早朝の極寒フォトレックシーンの撮影。本日も引き続きカメラマン末沢氏をモデルにすることになっている。彼はもうロビーに座って待っていた。「おはよう!」気持ちいい挨拶を交わし、朝食までの3時間半の撮影に出発。
末沢氏は朝から元気で動きがいい。話を聞くとネイチャーカメラマンの特長なんだという。「1日の中でシャッターチャンスは限りなくあるが、なかでも早朝と夕方は特別。その短い一瞬を確実にものにするため、いつも元気でいなければならない」と彼は言った。なるほど、ここでもプロ意識を見せつけられた。

末沢氏にはあらかじめ「雪が豊富で、寒さが醸し出せて、景色が良くて、朝日のきれいなところ」という難しいリクエストをしていた。そしてガイドしてもらってやってきた屈斜路湖近くの丘。何処かは不明だか、何の変哲もない国道脇の雪山(丘)。正直不安だった・・・。しかし、その丘を登ると一面に広がる雪原と凍り付いている壮大な屈斜路湖が一望できる素晴らしいロケーションが広がっていた。
「時間がない。すぐ始めるぞ!」の掛け声でカメラマン望月氏が慌しく撮影を始める。その呼吸と間を感じながらポージングするカメラマン役のモデル末沢氏。

朝日が上がる限られた時間の中で様々なポーズとアングルを使い分け、シャッターがどんどん切られてゆく。その一瞬のタイミングはお互いがプロカメラマンであったからなしえた技・・・。僕はそのすばやさに呆然とし、二人の呼吸と間に、体の奥底から素晴らしく感動してしまった。「プロってスゲー・・・。僕、カメラマンになろーっと・・・。」 あっ、末沢氏以外にも朝晩元気な人がいた・・・。このシーンを撮っていたカメラマン望月氏なのは言うまでもありません・・・。
<苦労したロケハン>
AM8:00宿に戻り朝食を取る。食事がおいしい。早起きは3文の徳とはこのことを言うのであろうか。いつもの3倍の食事を取り、夕方までは、ひたすら明日以降の撮影ロケハン(ロケの下見)をする。これが意外と厄介だった。なぜなら、「雪の無い場所探し」と「列車待ち」が待っていたからだ。
前者は秋のトレッキングシーンのため、街中でも雪多く残る北海道で、雪の無い山間を探さなければならない。道路には雪が無いものの、脇には沢山の雪が残り、未だ湖は凍りついている。うーん、困った。本当にそんな場所はあるんだろうか・・・。
後者ではトラベルシーンのため、無人駅で本数の少ない列車を待ち構え、カメラテストをする事になっている。「1時間に一本」その瞬間を狙うため、列車が来ない間に度重なるカメラテスト行ないアングルを確かめる。今回は夕暮れのシーンなので明るさも重要課題だ。予定時刻の3時間前からホームに入り、1本前の列車でカメラテストをする。明日のPM5:00ころの予定時間に来る列車を待ち撮影をおこなった。
これで今日のロケハン終了・・・。えっ?結果はどうだったかって?
心配はご無用。何時間か掛かったが、地元の末沢氏のおかげで理想のロケ地をチョイスする事ができた。「雪のないトレッキングシーン」には屈斜路湖畔に天然温泉が湧き地熱の高い場所と日当たりがよく釧路湿原を一望できる展望台トレッキングコースを発見。「トラベルシーン」ではカメラテストの結果、ロケ地元の「川湯温泉駅」行なう事にした。
準備万端!!明日から一気に忙しくなるぞ。
<緊急!生鹿事件>
PM6:00。突然、末沢氏の携帯が鳴る。
「えっ!?鹿を撃ってきたって!?」でも末沢氏に慌てた様子はない。
| 末沢氏 |
「知り合いが東京の奴らに食わせたいって、鹿を撃って来たから夜食いにいくべぇ」 |
| 僕 |
「え~?鹿っていったってどこで撃ってくるのさ?なに刺身だぁ~?」 |
| 末沢氏 |
「えっ、知らない?その辺の畑で撃ってくるんだべさ。街中は駄目なんだけど、畑にいる野生の鹿は、害獣として撃っていいんだ。鹿の刺身って聞いた事ないかい?新鮮じゃないと駄目だから、滅多に食えないけど旨いんだぞー。宿の夕飯を食ったら生鹿食いに行くだべさ~」 |
夕食をそこそこに僕達ロケ隊は生鹿を食いに行った。
ここは同じ町内のとある飲食店。本日休業と書いてある。「入れ入れ」と言って勝手に店に入って行く末沢氏。そこでは、50歳半ばのご主人が厨房で鹿をさばいていた。でも、よく見るとゲンコツくらいの肉をさばいているだけ。豪快に鹿一頭をさばいているところを想像していたので拍子抜けしたが、話を聞いてみると大掛かりな作業は裏倉庫の大きな流しで既におこなったんだという。
「見たい…」ということで恐る恐る見せてもらう事に・・・。
少し生臭い気もしたが予想以上に片付いていた流し台。しかし、鹿の角と大きくて蓋のされたごみ箱、そして大きなナイフが・・・。「おぇ~」瞬間、それ以上の好奇心は消えてしまったのは言うまでもありません。

野生の鹿君たち、ごめんなさい。 |
鹿の準備も整い、酒盛りスタート。そして「生鹿の刺身」。しょうゆベースで少し濃い目に味付けされ、千切りにされた鹿の心臓を口に含む・・・。
「うぅ、うまい!」ぷりぷりで歯ごたえがあり、そして、しつこくない、今までに味わった事がない食感。感じとしては「レバー刺し」といったところだろうか。食べると身体中に血が巡って凄いんだそうだ。次から次へと鹿料理が運ばれ、焼肉など沢山食べ、本当に貴重な経験をさせてもらった。初めての事だらけで興奮してしまった僕はすっかり酔ってしまった。
あー、北海道って盛り沢山で何事もビックだ!
でも、生鹿食ってこんなに身体が「カッカ」して、明日の朝起きれるんだろうか・・・。
後編(2004.04.23)に続く…
カスタマーリレーションズ部
斉藤 彰