
美しき自然の芸術であるオーロラを写真に撮りたい・・・。
感動の記憶を形にして残したい・・・。
「でもオーロラの写真ってどうやったら撮れるの?」
そんな方のために撮影術をこっそりお教えします。
■撮影機材
「フイルムかデジタルか」
まずカメラですが、一番最初に考えなければならないのは「フイルムかデジタルか」です。
結論から言えば「フイルム」です。理由は気温。氷点下の世界では電圧が下がってしまうため電気を多用するデジタルカメラはすぐに動かなくなってしまいます。またデジタルは光を電気信号に変換して電気回路にて伝達しますからその能力低下も考えられますし、CCD(またはCMOS)センサーの表面が結露しないとも限りません。以上のような理由から殆どのカメラメーカーが使用温度範囲の最低を0℃と謳っています。これは撮影に支障をきたす可能性があるというだけでなく、万が一故障した場合にメーカーとして責任を負えない(保証対象外)ということでもあります。それでも「どうしてもデジタルで」という方はあくまでも「自己責任」においてお願い致します。
「使い捨てカメラ」
次に「写ルンです」に代表される「使い捨てカメラ」で撮影できるかどうかですが、これも「ほぼ無理」といえます。詳しくは後述しますがオーロラの光は非常に暗いためシャッターを長い時間開き光を充分にフイルムに当ててやらなければなりません(長時間露光)。このためシャッター速度調整ができない「使い捨てカメラ」では余程明るいオーロラでも出ない限りフイルムに写し留めるのは不可能に近いといえます。
「コンパクトカメラ」
ではコンパクトカメラではどうでしょう?これも非常に難しいといえます。上述したようにオーロラを撮影するためには長時間露光してやる必要がありますが多くのコンパクトカメラの場合シャッター速度はプログラムにより自動制御されています。残念ながらこの「一般撮影向き」に設定されたプログラムでオーロラが綺麗に写ることはまずありません。
例外としてバルブ機能が付いている機種なら撮影できる可能性があります。
バルブ機能とはシャッターボタンを押している間シャッターが開き続ける機能です。もしお手持ちのカメラにこの機能がある場合は以降の撮影術を参考に挑戦してみる価値はあります。
「一眼レフカメラ」
ということでオーロラ撮影をするには「バルブ機能を持つフイルム一眼レフカメラ」が最適であることがご理解頂けたかと思います。では一眼レフカメラについてもう少し詳しく解説していきます。
一口で一眼レフカメラといっても多種多様な機種があります。
一眼レフカメラにおいてもまず第一に注意したいのはデジタルカメラの項でも述べた電源についてです。一眼レフカメラの場合シャッターの制御が電気(クォーツ)制御のものと機械(ギアやガバナー)制御のものがあります。近年のオートフォーカス機の場合は間違いなく電気制御です。それ以前のマニュアルフォーカス機でもシャッター制御は電気制御のものが多く存在します。デジタルカメラに比べ消費電力が少ないとはいえこれらのカメラも電池が切れるとシャッターが切れなくなります。ただしシャッター電気制御式マニュアルフォーカス機の多くはバルブに関しては機械式の場合が多いので電池が無くても撮影できます。お手持ちのカメラを使われる場合や新規に購入(中古でも)される場合はこの点を確認して下さい。
オートフォーカス機はバルブも電気式になるので常に電源に気を付ける必要があります。対策として電池を2?3セット用意し予備は常にポケット(なるべく内側)で保温しておきます。動かなくなったら入れ替えて冷えた電池はポケットに入れ温めます。温めるとまた少し使えるようになります。長時間カメラに入れっ放しにしておくといざ撮ろうという時にシャッターが切れないことがあるので休憩の際は面倒でも電池を抜いて温めておく方がよいでしょう。ただしブレイクアップ現象は突然起こるので「勘」と「よみ」も大切です。カメラの電池蓋の位置、開閉方法、電池の向きを確認しておき真っ暗な中で手探りでも電池交換が出来るように練習しておくと良いかもしれませんね。
今回オーロラ撮影のために新規購入をお考えの方には以下の機種をお勧めします。
| 新品の場合 |
ニコンFM3A または ニコンFM10 |
| 中古の場合 |
ニコン上記機種 及び FM、FM2、NewFM2 など
キヤノン NewF-1 など
ペンタックス LX、MX など
オリンパス OM-1 など |
|
* 購入にあたってはカメラ店の店員にオーロラの撮影に使いたい旨を伝えよく相談しましょう。
* 上記紹介機種はオーロラ撮影に限ってのお勧め機種であり一般撮影においては近年のオートフォーカス機の方が使いやすいといえます。オーロラの撮影は特殊撮影なので予算や長期的視野において「オーロラ撮影用にわりきる」のか「旅行後の一般使用も考える」のか最初に決めてしまった方が良いと思います。
「レンズ」
一眼レフで撮影するとなると次に考えなければならないのがレンズです。ご存知の通り一眼レフの特徴はレンズを交換できる点です。レンズを換えることにより様々な画角(写り込む範囲)を撮影することが出来ます。オーロラの場合は大空に広がりますから画角は広いに越した事はありません。
レンズの画角は50mmというようにmmで表示され、50mmが肉眼で見た感じに近いため標準レンズと呼ばれます。50mmより数字が小さくなると広角、大きくなると望遠になります。オーロラ撮影には最低でも35mmの画角が欲しいところです。(ちなみにこのガイドに掲載の写真は20mmで撮影しています)
画角と並んで重要なのがレンズの明るさです。レンズには明るさがあり明るいレンズの方がシャッターを開く時間が短くて済みます。暗いレンズだと光量が少ないのでその分シャッターを長く開いてやらなければなりません。オーロラは動きが激しいのでシャッターが長く開いているとどんどんぼやけた写真になってしまいますから動きを少しでも止めるためには明るいレンズの方が向いています。レンズの明るさはF2.8のようにF値という数字で表されます。数字が小さいほど明るいレンズです。
「フイルム」
フイルムには光に対する感度があります。ISO400のように表示され、数字が小さい方が粒子がきめ細かく画質は高いのですが感度が低いのでシャッターを長く開けてやらねばなりません。数字が大きくなるほど感度は高くなるのでシャッターを開く時間も短く出来ますが粒子が粗くなるため画質は落ちていきます。オーロラの撮影にはレンズの明るさにもよりますが一般的にISO400?ISO800が使いやすいでしょう。
またフイルムにはネガフイルムとポジフイルムがあります。一般的なカラー写真はネガフイルムが主流で、色が反転した皆さんご存知のあのネガです。対してポジフイルムはフイルム自体に色が正しく反転せずに写ります。スライド写真と言えばご存知の方もおられると思います。ネガが一般的なのは暗い部分から明るい部分まで明暗の許容範囲が広いからです。少々光量不足でも逆に光量オーバーでもプリントする段階である程度補正できます。対してポジは明暗の許容範囲が狭いので厳密な光量調整が必要となるため、ある程度の技術と経験が求められます。失敗が少ないのはネガですが、しかしポジの方が発色が良く夜空の黒の締まりも良いためきちんと写れば綺麗な写真になります。ただしプリント代は割高になります。大量にプリントするのであればネガが良いでしょう。長期間滞在出来るのであればポジでも数本撮ってみておくのもよいかもしれませんね。
「その他必要な物」
オーロラ撮影において欠かせないのが三脚とレリーズです。既に述べたように長時間露光をしなければならないので必ず三脚を使用します。手持ちでは間違いなく手ブレします。少しでも頑丈な三脚の方がより安定します。脚が金属のものは素手で触ると危険なためスポンジやテープを巻くなどの対策をしておいた方が安全です。カメラ店で専用のものが販売されていますが断熱効果が得られれば代用品で構いません。
レリーズとはカメラに繋ぐケーブルで、カメラに触れずに手元でシャッターを切る道具です。これがないと撮影中の数十秒間シャッターボタンを押し続けないといけないので三脚に載せていても手の震えがカメラに伝わりブレてしまうかもしれません。マニュアルフォーカス機の多くはシャッターボタンに直接ねじ込む汎用タイプですがオートフォーカス機の場合は電気接点接続の専用タイプが多いのでカメラ店で確認して下さい。中にはレリーズが付かない機種もあります。バルブ機能付きコンパクトカメラで撮影される場合もレリーズが使えません。リモコンで操作できるものもありますがリモコンの電池が切れればもちろん使えなくなります。最期の手段は数十秒がんばって震えを堪えながらシャッターボタンを押し続けて下さい(笑)。
小型の懐中電灯もあった方が良いでしょう。もちろん使用時以外はポケットで保温。懐中電灯用の予備電池も忘れずに。点灯時は周りに撮影中の人がいないか気配りを。
■撮影方法
それではいよいよ撮影の仕方です。フイルムを入れ三脚にセットしレリーズを接続します。まずピントは無限遠(∞マーク)で固定します。オートフォーカス機はオートフォーカスを解除して手動で無限遠にします。コンパクトカメラはフォーカスモード切替で風景モード(山の絵であることが多い)にします。次に露出モードをマニュアルにし、シャッタースピードをバルブ(BまたはBulb)に固定。絞りを開放で固定。絞りの設定はマニュアルレンズの場合レンズ根元(オリンパスのみレンズ先端)のリングを最小数値にセットします。オートフォーカス機の多くはボディ側での設定となるので取扱説明書を参照して下さい。同じく最小数値にセットします。あとはオーロラの出現を待ち構図を決めます。
さてシャッターを開ける時間ですが、月明かりの状況にもよりますしオーロラの明るさはまちまちなので「これが正解」というのはありません。そこで基準となるデータをご紹介します。
|
F1.4 |
F2 |
F2.8 |
F4 |
F5.6 |
| ISO100 |
20秒 |
40秒 |
80秒 |
160秒 |
320秒 |
| ISO200 |
10秒 |
20秒 |
40秒 |
80秒 |
160秒 |
| ISO400 |
5秒 |
10秒 |
20秒 |
80秒 |
160秒 |
| ISO800 |
2?3秒 |
5秒 |
10秒 |
20秒 |
40秒 |
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上記データはあくまでも参考です。写真の露出時間は倍々となるのでデータをベースにその半分とその倍の計3枚(例えば20秒が基準の場合、10秒・20秒・40秒の3枚)撮影すればまずどれかに写るでしょう。
■注意点
まず何度も述べてきたように金属部分に触る時は充分に気を付けましょう。
カメラやフイルムの取り扱いで注意したいのは結露です。屋内と屋外の温度差が激しいため、暖かい室内からそのままカメラやフイルムを持ち出したり、外で冷えきったカメラを暖かい室内に持ち込むと結露してしまいます。屋外でレンズに温かい息を吹きかけるのも避けるべきです。レンズが一度曇ってしまうと曇りがとれるまで時間がかかり撮影チャンスを逃すかもしれません。屋外に持ち出す時はカメラケースに入れてタオルで包みビニール袋に入れるなどし、外に出た時に温度が徐々に伝わるようにして充分待ってから取り出します。屋内に持ち込む時も同様です。とにかく急激な温度差を与えないようにしましょう。
またフイルムの巻き上げや巻き戻しにも注意が必要です。極寒地ではフイルムが切れたり割れたりすることがあります。手巻き式の場合はなるべくゆっくりと巻いて下さい。電動式の場合は運を天に任せるしかありませんが…。
さて、帰国してプリントしてみたらちょっと暗いまたは明るいと感じた場合、諦めてしまわずに焼き直しを頼んでみましょう。プリントの段階である程度は明るさの調整が出来ます。焼き直したいプリントを持参し「もう少し明るく」とか「暗く」と指示を出しましょう。可能であればやってくれます。特にネガフイルムの場合は調整幅が広いので頼んでみる価値はあると思います。
なお、現像所はある程度きちんとした店を選びましょう。スピード現像などは避けた方が良いと思います。フイルムは現像液と言う薬品に浸けて現像しますが現像を繰り返すと現像液は汚れてきます。早いお店はそれだけ現像液を酷使し交換のサイクルも長くなってしまいます。汚れた現像液で現像されると発色が悪くなったりフイルムにゴミが付いてしまったりします。せっかくの貴重な写真ですから少々高くてもきちんとしたお店に出したいですね。

それではみなさんも素敵なオーロラ写真が撮れますよう・・・Good Luck!
※花谷タケシが撮影した写真は、ホームページ「熊魂bearspirit」よりご覧いただけます。