川崎 憲一郎『スコーロン』フィールドインプレッション

2016.09.01 Update

あのサバイバル登山でも抜群の防虫効果を発揮

 

本誌の主要登場人物であるサバイバル登山家・服部文祥と山へ入る機会が多い。電気製品は持ち込まず(カメラ以外)、米と少々の調味料を持って、現地の動物からタンパク質を得る。もちろん、歩いていれば目的地に到着する人工的な道は極力使わない。日が暮れてもヘッデンがあるとか、携帯電話で救助を呼べるとか、道迷いしてもGPSを使えるとか、そんな超人的な安心は抜きにして山と山を繋ぐ。服部はそんな山旅をしている。

 

 

が、その顔立ちからもストイックさが滲み出る服部とて、現代文明を完全否定するような原理主義者ではない。ヘリコプターで化石燃料をばら撒きながら運ばれた山小屋の飯は食わないが、自分で持ち上げた物に関しては寛容である。氏自身、バックパックに1.5ℓのコーラを忍ばせることもあるし、私が隣でタバコをふかしていても何も言わない。それはアース製薬と帝人フロンティアが共同開発した科学技術の塊「スコーロン」をシレッと隣でまとっていても然りである。

 

 

登山道を歩かず、沢の傍らにタープを張って寝る服部の山旅は、ある意味虫との戦いでもある。20年近くもそんな山旅を続けている氏に話を聞くと、就寝時の虫対策には特に苦心したようだ(現在は“茶漉し”による防御を完成させている)。夏の山旅においては悪場を越えるための一時的な恐怖よりも、虫刺されによる恒常的な痒みの方が精神を蝕むのだ。

 

ただまあ、2016年夏の服部同行取材において虫被害はほとんどなかった。夏の藪沢にいる限り常に身体の周りには虫が集っているわけだが、今季は先のスコーロンウェアをまとっていたためだろう。虫に集られこそするが、身体を這い回られることはあまりない。袖に止まった虫たちを観察してみると、小さな虫たちはすぐに飛び立って、目視確認、そして撃退できるような大きな虫だけが居座る。これが意味するところは、「いつ刺されたんだろう」と文句を言いたくなるあのイヤらしい闇討ちが起きない、ということである。

 

 

ちなみに、今季の山旅では川に身体を盛大に浸して徒渉する場面が何度かあったが、スコーロンウェアはその後の速乾性も抜群。ボルダームーブを強いられる悪場でも窮屈感はなく、夏山で9日間、風呂も入らず過ごした割にニオイも抑えられていた(これは服部、私、カメラマンの皆が皆“もののけ臭”を放っていたから気にならなかったという可能性もある)。フォックスファイヤーのスコーロン製品は、アウトドアウェアとしての純粋な性能も高いことを付け加えておきたい。

 


川崎 憲一郎(かわさき けんいちろう)

アウトドア雑誌「Fielder(笠倉出版社)」編集長。自然を生き抜く技術に特化した誌面内容から、取材先・遊び場は藪山。昆虫から狩猟鳥獣まで、一年を通して野生食材を探し回っている。
<WEBサイト> Fielder

 

 

【お断り】このレポートは事実に基づいて掲載しておりますが、スコーロンの効果効能は使用環境・条件等により、必ずしも保証するものではございませんので、ご理解のうえご活用いただきますようお願い申し上げます。
※一部具体的な虫の名前を“虫”という表現に置き換えて掲載しています。