菅原 貴徳『オクタライニングカーディガン』フィールドインプレッション

2022.09.15 Update

新たな防寒素材とともに、久々の北極圏へ

 

2022年の6月中旬~7月下旬、ノルウェーへの海外遠征に行ってきた。海外に出かけるのは、2年4ヶ月前に、タヒチを訪れて以来。その間長かったけど、旅好きの自分としては、よくここまで生き延びたなぁ…という感じ。その間に起こった色々なこと、今世界で起こっていること…まだまだ心配なことは尽きないが、それと同時に、今できることをやることの大事さに気付かされたこの期間だったことも事実。最善を尽くそうと思い切っての海外遠征を決めたのだった。

 

久しぶりの成田空港から日本を経ち、カタールを経由して、ノルウェーの首都、オスロへ。ノルウェーは、かつて留学生として1年を過ごした思い出の国だ。ノルウェー語の響きや、いつまでも沈まない太陽、驚くほど高い物価。その全てが懐かしい。

 

 

しかし、今回の目的地はさらに北にある。首都オスロからさらに飛行機で移動し、北極海を越え、北極圏、スバールバル諸島へとたどり着いた。北緯78度という高緯度地域で、地球儀を上から見ると見つけやすい。

 

街中を飛び回るのはユキホオジロ。この島で暮らす、唯一の小鳥だ。窓からライチョウやヒメウミスズメの群れ。海岸ではホンケワタガモの親子にも出会えた。ただ今回はその先に楽しみがあった。10日間、帆船にのって北極海をクルーズし、鳥たちや動物たちを探しながら、点在する島嶼を巡るのだ。

 

 

クルーズ中、常に船の周りを海鳥が飛び交うような有様で、24時間太陽が沈まないこともあって、体力が許す限り甲板に出て撮影を続けた。波の穏やかなフィヨルドの奥では、時折、小船に乗り換えて氷河に接近したり、そこから上陸してツンドラを歩いたり、様々なアプローチで撮影を行なった。

 

 

初夏とはいえ、気温は高くても7度ほど。風が吹けば一気に寒さを感じる。加えて、船内と船外の頻繁な出入り、機材を背負ってのハードな登坂にも対応しなければならない。温度調整の難しいなかでの観察・撮影となったが、昨年から愛用しているゴアテックスジャケットと、「極地テスト」用にと新たに渡された新素材「オクタCPCP」を使用した『オクタライニングカーディガン』で快適さを感じ続けることができた。

 

特に「オクタCPCP」は軽さ・薄さ・肌ざわりといった点で、これまでのライナー素材とは全く違う印象を受けた。着膨れしない薄さなのに、圧倒的に暖かい。また動いて汗ばんだ後でも、汗冷えしないのも好印象。フードがないカーディガンタイプのデザインも、重ね着には好都合だった。

 

 

多くの鳥や動物たちとの出逢う幸せなクルーズも終わりかけの時、コロナが遠因で帰路の飛行機が飛ばなくなり、幸か不幸か、ノルウェー滞在が伸びてしまった。不測の事態に一瞬焦るも、不意に訪れたこの延泊期間も撮影に没頭する。コロナの影響で海外をふくめ遠くへの旅が難しかった期間を経ただけに、いま戻りつつある旅の時間も、ひと昔以上に貴重で大切なものになったと感じる。そんな旅には、お気に入りの、そしてクオリティ的にも安心して身を任せられる、本物のクロージングで出かけたいものだ。

 

 

 

 

写真家

菅原 貴徳 | Takanori Sugawara

 

1990年、東京都生まれ。幼い頃から生き物に興味を持って育ち、11歳で野鳥撮影をはじめる。東京海洋大、ノルウェー北極圏への留学、名古屋大学大学院で海洋生物学を専攻した後、写真家に。国内外問わず、様々な景色の中に暮らす鳥たちの姿を追って旅をしている。近著に『散歩道の図鑑 あした出会える野鳥100』(山と渓谷社、写真担当)、『図解でわかる野鳥撮影入門』(玄光社)などがある。
<WEBサイト> FIELD PHOTO GALLERY