戸塚 学『スコーロン』フィールドインプレッション2023 前編

2023.08.10 Update

スコーロンを着た渡り鳥 前編

2023年ようやく新型コロナウィルスの猛威も収まり、徐々に規制も緩和されてきました。今までどこに行くにもなにか「後ろめたさ」を感じることが多かったのですが、外に出る仕事も増えて肌感覚で「変わってきたな」と感じるようになりました。肌感覚で感じるといえば吸血する虫たちから身を守るウェアもですよね。

今回も今年の新作を身にまとい各地を転戦しながらスコーロンとともに旅をしたレポートをお届けします。

奄美大島編

4月中旬に旅行社のツアーガイド+下見を兼ねて8泊9日(2本)で奄美大島へ向かいました。例年であれば「湿っぽく暑い」印象の奄美大島ですが、今年は雨が多いだけでなく、晴れた日は乾燥して風が冷たく感じるおかしな気候でした。

新型コロナの影響で2年続けてこのツアーが中止になっていたので、今回は「3度目の正直」となるツアーでした。私自身も久しぶりに訪れた奄美大島は、世界遺産に指定されてから初ということもあり、新たなルールも決められ戸惑う事ばかりでした。

マングースとノネコの駆除が成功しているようでアマミノクロウサギとの遭遇率もさることながら、森に鳥たちが多いように感じました。

さてスコーロンの効き目ですが、この時はまだ今年の新作が間に合わなかったので昨年のウェアとパンツで向かいました。しかし気温が低いこともあり飛び回り、まとわりつくあの連中が目につきません。這って引っつく連中の被害もなかったのは身体を張っている身からすればちょっとがっかり。

ただ2本目の最終日は雨上がりの晴れとなり、湿度も高く、気温も上がったことで「蒸し暑さ」を感じると同時に飛び回り、飛んでまとわりつく連中が出現。 しかし昨年のスコーロンでも十分効き目があったようで被害はゼロでした。

ちなみに2回のツアーで各1回、夜はアマミノクロウサギをはじめ夜間の生き物探しツアー出かけましたが、2回とも被害は0でした。結果 まとわりつく、うっとうしさ感10%、被害0。

韓国の離島編

5月上旬、韓国1本目は離島に渡り「渡り鳥」の観察をするツアーに来年の下見同行で出かけました。せっかくなので現地で今年の新作を身にまとったのですが、もともと島にはひっつく虫はいないとのことで、まとわりつく虫対応となりました。

しかし残念ながら天気も悪くないし、海況も穏やかに見えるので渡れるんじゃないのか?と思ったのですが、結局3日間船が出ないまま渡ることができませんでした。

ただ不幸中の幸いは韓国本土に戻る予定日の海況が大荒れだったことを考えれば、戻れなくなっていたのである意味不幸中の幸いだったかもしれません。そのため島へは渡っている予定の日数を韓国本土で鳥が見られそうな場所を移動することになりまた。

韓国には日本のシカよりも小さな「ノロジカ」が多くいることからひっつく虫が急増しているのは日本と同じようだと感じました。

なんと驚いたことに韓国には観光地兼フィールドに「殺虫剤」が装備されていることを考えればかなり問題視をされているのだと実感させられました。しかし気温が低めという事もあったため彼らの存在を感じることはありませんでした。

結果 うっとおしさ感0、被害も0。

新潟・長野編

5月中旬、久しぶりに長野県戸隠へ向かいました。その前に新潟県妙高へ撮影に入りました。さわやかな天気で超気持ちがいい。しかし鳥たちのさえずりが聞こえない・・・。いや少ないのです。レンズを担ぎながら鳥たちを探すもほとんど出会えないので早々に切り上げて戸隠植物園へ移動します。

さすがに標高が高いので気温が上がっても吸血軍団はまとわりついてきません。おまけに朝晩の寒いことと言ったら洒落にならないのですがそれなりに撮影ができてラッキーでした。やはり気温が上がっても吸血軍団の攻撃はありませんでした。

戸隠からは岡谷へ向かったのですが、ここは標高が低いせいか機材を担いで歩くと結構汗をかく。吸血軍団に淡い期待をしましたが、彼らはまとわりつかず、かわりに目の周りに群がる黒い虫には悩まされました。残念ながら涙を嘗めに来るこ奴らにはスコーロンの威力は効かないようでした。

結果 うっとおしさ感は8、被害は0。

韓国編

5月下旬から6月上旬、再び旅行社の撮影ガイドとして2回目の韓国入り。

前回は海に泣かされましたが、今回は天気!出発数日前に台風2号が発生して、沖縄周辺で動かないおかげで、韓国南部に梅雨前線が停滞して雨続き。 という事は湿った空気が重くのしかかる。という事は吸血軍団が出やすいはずだ。場所もヤイロチョウの生息する場所で森の中という好条件。

今回検証にあたり問題が!それは1名を除いてレインウェアの下にみなさんスコーロンを装備しているという事。そのスコーロンを着てない1名がやはり手を刺され腫れあがってしまっていた。

これは効果があったというべきか?悩ましい。それ以外もノロジカが多く出現する場所を廻ったのだが、被害はなく、まとわりつく虫もひっつく虫も目視での確認はできず、まとわりつく虫のうっとおしさも感じられない旅だった。

結果 うっとおしさ感は0、被害も0だった。

写真家
戸塚 学 | Gaku Tozuka

1966年、愛知県生まれ。野鳥を中心に撮影活動を続ける。現在は野鳥を含む環境の撮影を進め、「きれい・かわいい」だけではない「においのする写真」を目指す。作品は雑誌・カレンダー等に発表。 写真集「鳥たちは今日も元気に生きてます!」文一総合出版 他。

後編に続く