Foxfire 2023Fall & Winter
1984年に発売されたクラシカルな名作、「フィッシングセーター」を復刻。単に当時と同じものを再現するのではなく、日本の老舗ニット工場の高度な縫製技術と、熟練の職人技により丁寧に編み上げられ、現代にふさわしいフィッシングセーターに仕上げています。
ダブル編みのハイネックやエルボーパッチなど、当時のディテールは踏襲しつつ重量感を軽減し、より柔らかな着心地になった復刻モデル「Fishing Full Zip Sweater」。さらに、シンプルながら存在感があり、デイリーでも使いやすいクルーネックセーターのニューモデル「Fishing Crew Sweater」を新たにラインアップ。 そんなビンテージライクで個性あふれるフィッシングセーター2型を、今回の復刻を実現した職人技とともにご紹介していきます。
Fishing Sweaterの戦後の1952年、「米富繊維株式会社」はニットメーカーとして山形県南東部山辺の地で創業、現在に至る。
“米富”の名は代々伝わる“米沢屋富蔵”という屋号の通称。
山形県では、戦時中から羊の飼育が奨励されてきた歴史があり、戦後の復興の中で、女性の社会進出と機械の進歩によってニット産業が急速に発展してきました。そのため、繊維、紡績メーカー、染色業が多く存在しています。その日本有数のニット産地として知られる山形県で70年以上の歴史を誇る老舗ニットメーカー。
米富繊維は、さまざまなブランドのニット製品を製造を手掛けています。また自社でニットテキスタイル(生地)の開発部門を擁することで、これまでに自社開発した約2万点ものテキスタイルをアーカイブ。単なる生産にとどまらず、長い歴史とニットへの技術や知見を活かし、素材開発から生産までを自社工場内で一貫しておこなう、まさに「ニットのプロフェッショナル」。
さらに、いち早くファクトリーブランドを立ち上げ、ニットが持つ無限の可能性を追求。国内外に向けて高品質かつ洗練されたニット製品を発信している「ニット界のパイオニア」ともいえるメーカーです。
そんな米富繊維のクラフトマンシップで、1984年当時のフィッシングセーターをベースにアップデートを施したものが「Fishing Full Zip Sweater」。糸を編み上げることで作るニット製品において、着心地や風合い、肌触りを決める重要なファクターが「糸選び」。今回の復刻にあたって、米富繊維の職人と長い打ち合わせを経て選ばれた「糸」は、「オーストラリア産ラムウール」。ラムウールは、光沢感、保温性ともに優れ、なめらかな肌触りが特徴で、まさに今回の復刻にふさわしい「糸」。
無数にある糸の中でも、ラムウールの持つ着心地は抜群。その反面、手紬のような“あじ”も出る糸なので、当時のセーターに近い粗野な雰囲気も兼ね備えています。それが新しい製品であるにもかかわらず、古着のようなどこか懐かしいテイストで、「本来のアウトドアギアらしさ」をも感じられます。ウールが持つ自然の暖かさに包み込まれるような、趣のあるセーターに仕上がっています。
カラーはモカとグレーの2パターンをご用意。グレーのモデルでは、表側にクラシカルなグレーのネップ糸を(繊維が絡み合ってできた節のある糸)、裏側にソリッドで力強いブラックの糸と2種類の糸を組み合わせることで、オリジナルモデルと同じ編み方(両畦編み)ながらも、より立体感が強調され、クラシカルな雰囲気を際立たせています。
もちろん目を引く特徴的なデザインの「成型編みポケット」や体温を逃がさない「ダブル編みのハイネック」、腕の曲げ伸ばしや摩擦で傷みやすい肘部分を保護する「エルボーパッチ」、ウエスト周りにアクセスしやすい「YKK製ダブルファスナー」など、当時のディテールはしっかり踏襲しています。
米富繊維をパートナーに迎え、熟練の職人技で編み上げたことで、抜群の着心地を実現。生地に一度もハサミを入れない伝統的なスタイルの「成型編み」という手法で編み上げられるため、ほつれを防ぐロックミシンによる縫製が不要に。それは縫いしろが少なくなり、生地に余裕ができることで、ツッパリ感やゴワツキが減少。糸はもちろん、ニットの良さも最大限に生かした柔らかな着心地を手に入れました。
ニット製品の作り方には、大きく分けて「成型編み」と「カット縫製」の2通りがあります。カット縫製は、編地(生地)を身頃や袖といった各パーツに合わせて裁断し、それぞれのパーツをミシンで縫製して繋ぎ合わせます。その際に複数回縫製するため、成型編みに比べ伸びしろが少なく ニット本来の”伸び”が減ってしまうので、柔らかな着心地に影響します。 一方、今回のセーターでも採用している成型編みは、昔から作り続けられてきた伝統的な編み方で、身頃や袖、衿などの形を直接編み上げていく製法です。
出来上がったパーツを裁断することがないため、カットロスがなく糸の使用量も無駄がありません。その反面、それぞれの糸やパターンの特徴によって編み方をこまめに調整する必要があります。また、ダイレクトにパーツを製作する分、緻密な計算と多くの経験が必要とされ、試作プロセスにも多くの手間と時間がかかる手法で丁寧に制作されています。
まさにニットのプロフェッショナルだからこそ実現できた軽やかで包まれるような着心地を味わってみてください。
今回の復刻に合わせて、Foxfireが新たに提案する新作フィッシングセーターが「Fishing Crew Sweater」。イギリスとフランスの間に浮かぶガンジー島で生まれ、フィッシャーマンセーターの元祖とも言われている「ガンジーニット」に着想を得て誕生したクルーネックセーターです。
漁師や船乗りたちが、冬の寒い海でも耐えることができるように高い保温効果を考えて作られたガンジーニットは、瞬く間にガンジー島からイギリス中の港に広まって多くの支持を獲得。
「Fishing Crew Sweater」では、そんな伝統的なガンジーニットと同じように、肩幅と身幅が同サイズで直線的な縦長シルエットになっていて、身頃に対して垂直に袖付けするつくりも踏襲。
アームホールや裾部分に、船のはしごやロープ、波などをモチーフにした編み込みの模様が、あるのも伝統的なガンジーセーターの特徴です。
伝統的なガンジーニットは暗い海の上でも着られるように、前後対称で前向き・後ろ向きの区別がないつくりになっていますが、そこは日常使いしやすいようにアレンジ。「ギア」的な要素もあるガンジーニットの要素を取り入れつつ、現代的なニットへとリファインしています。