清水 哲朗『サーモコア』『ユニットシステム』フィールドインプレッション

2018.11.22 Update

モンゴル・ゴビ砂漠で防寒レイヤリングシステム

 

 2018年10月に約3週間のモンゴル・ゴビ取材を敢行した。目的はゴビの風景と野生動物を撮影すること。特に野生動物はアルガリ、アイベックス、ガゼルの他にユキヒョウ、オオカミ、リンクス、ノロバ、保護区ではゴビグマや野生ラクダなどが生息している。しかし、種類は多いが絶対数は少ない。広大なゴビで出合えるかどうかは運次第。遊牧民への聞き込みをし、時にはサポートをお願いし、四輪駆動車に乗りながらテント泊を繰り返し、取材を進めていった。

 

 

 「ゴビ」とはモンゴル語でまばらに草が生えている土地のことを言う。恐竜の化石がゴロゴロと眠っている有名なゴビ砂漠も砂丘が連なるイメージはごく一部で、360度真っ平らな場所もあれば、火星の表面に似た風景や2,500m前後の山脈が広がっていたりもする。中国国境に近いゴビでは遊牧民も住んでいないため、原始の地球がそのまま残っている。道もなくアクセスは極めて悪いが、だからこそそこの風景や生息する動物を撮影してみたいという写真家としての欲望が沸き起こるのである。

 

 

 ゴビにはこれまで数え切れないほど来ているが、秋冬は例に漏れず寒い。雪も降り、−20℃になることも珍しくはない。僕がゴビ入りした10月上旬は昼間は+15℃前後とうららかだったが、日没とともに一気に冷え込み、夜中から明け方にかけては0℃〜−4℃程度になる大陸性気候。もっとも寒い日には−7℃になった。風が吹けば体感温度も下がる。

 

 そんなゴビで取材をするのに最も気にかけているのが衣類の温度調整。暑すぎても寒すぎてもいけない。最悪を想定することは大事だが、着膨れしてフットワークが悪くなることは極力避けたいのが本音。機材を背負い、急峻な山を上り下りすれば当然汗をかく。上着を脱いでも邪魔にならない程度の大きさが理想だ。

 

 

 そこで今回は軽量薄手で暖かい「サーモコア」と、アウターの適温調整ができる「ユニットシステム」で全身を包むことに決めた。衣服内温度+3℃。「サーモコア」は日本を発つ4日前に新宿の登山店で「蓄熱保温」「帯電防止」「生地薄」「吸汗速乾」の四字熟語の羅列(三字もあるが)を見て「コレはイケる!」と一目惚れし、テストもせずに現地へ持って来たのである。薄着でどこまで耐えられるかに挑戦するのは男の本能。冬でも短パン、ランニング姿の小学生男子にも似た「俺、すげーだろ」アピールに他ならない。最初は寒く感じるかもしれないが、3日あれば体も慣れるという経験も踏まえての選択だった。

 

 

 これが大当たりだった。車での移動中は「サーモコアミッドモック」1枚のみ。外に出る時に「サーモコアマイクロフルZIP」を羽織り、撮影。夕方から明け方にかけて寒くなるとカメラザックに収納していた320gと軽量の「PFウォームスダウンジャケット」を取り出し、もっとも寒い時には「フォトレックデアリングジャケット」で完全防備。「PFウォームスダウンジャケット」と「フォトレックデアリングジャケット」は「ユニットシステム」を採用しているため、ファスナーで連結させればアウターとインナーが結合。1着となることで一度腕を通すだけで2枚分を脱ぎ着することができるのは便利だった。ポリエステル素材は重ね着をすると静電気が起きやすいが、各部にアンチスティックテープが縫いこまれた「帯電防止」加工をしているおかげで気になることはなかった。

 

 

 これが下半身も「サーモコアスパッツ」、「サーモコアパンツ」、「サーモコアショートソックス」と組み合わせ、さらにはモンゴルの田舎の市場で3,500円で購入したインナーがフェルト素材のブーツを履いていたため寒さは全く感じられなかった。「サーモコアスパッツ」と「サーモコアパンツ」はともにストレッチ性が高く、砂漠でも山々を数km歩いても苦にならないほどイメージ通りに動くことができた。予想外に良かったのが「サーモコアパンツ」のポケット。ファスナー付きでどんなに動いても自然に開くことはなく中に入れたものがポロリと落ちることもなく、端から見ると両サイドにポケットがあるとは思えない縫製ラインと見紛うスタイリッシュなデザインにこだわりを感じた(高校生の時にバイト代の全てを衣類につぎ込んでいたため、機能性がどんなに高くてもデザイン性が低ければ選ばないこともある)。

 

 

 モンゴル・ゴビ取材は連日順調で風景も動物も満足のいく結果が得られた。ユキヒョウやオオカミ、ゴビグマ等は次回以降に持ち越しとなったが、軽量、薄手で暖かい「サーモコア」で固めた動きやすい衣類と出合えたのも大きな収穫だった。ゴビでは約2週間シャワーを浴びられなかったが、下着以外一度も着替えることなく全身「サーモコア」で過ごした。不快に感じることは皆無で着心地良いままだったのは素材の良さからだろう。

 

 

 すっかり「サーモコア」と「ユニットシステム」を気に入った僕は日本帰国後の11月上旬に訪れた津軽取材でも3泊4日着替えることなく同じ組み合わせで過ごした。個人差はあるが、0℃ぐらいまでなら問題なくこれで過ごせるだろう。軽量、薄手で暖かさを求める人にはこの冬ぜひ「サーモコア」を試してほしい。

 

 

 

今回の使用アイテム

 

上半身

フォトレックデアリングジャケット (グレーカモ)

PFウォームスダウンジャケット(オリーブ)

サーモコアマイクロフルZIP(ブラック)

サーモコアミッドモック(ブラック)

サーモコアフリースマルチマッフル(ブラック)

サーモコアフリースグラブ For Touch Screen(ブラック)

グラベルグリッパーウォームタイプ(チャコール)

アクアガードニットワッチ(オリーブ)

・カモフラ-ジュロゴキャップ(オリーブ)

パワームーブコルセット ※腰痛対策

 

下半身

サーモコアミッドスパッツ(ブラック)

サーモコアパンツ(カーキ)

サーモコアショートソックス(チャコール)

 

ブーツ

・モンゴル南ゴビ県の市場で3,500円で購入した、内部がフェルトのブーツ

 

 

 

 

写真家

清水 哲朗 | Tetsuro Shimizu

 

1975年横浜市生まれ。23歳でフリーランスに。独自の視点で自然風景からスナップ、ドキュメントまで幅広く撮影。個展多数開催。出版物は写真集『CHANGE』『New Type』、写真絵本偕成社世界のともだちシリーズ『モンゴル』、フォトエッセー『うまたび-モンゴルを20年間取材した写真家の記録-』など。主な受賞暦は第1回名取洋之助写真賞、2014日本写真協会賞新人賞、2016さがみはら写真新人奨励賞。公益社団法人日本写真家協会会員
<WEBサイト> Tetsuro Shimizu Official web site