FIELD IMPRESSION #003

計り知れない
ものを撮る

花岡 凌

フォトグラファー

花岡 凌

1993年長野県下諏訪町生まれ。2019年に北極冒険家・荻田泰永が主宰した北極冒険行に参加。それを機に写真家・柏倉陽介に師事し、写真の道に進む。現在、長野県を拠点とし自然に関わりをもつものを中心に撮影を行なう。

フォトレックダウンジャケット_花岡 凌

INTERVIEW

花岡 凌

人を寄せつけない遠い世界の自然と、身近な自然を舞台に連綿と受け継がれる文化。両者に共通するものとは何だろう。各地の自然を撮影しながら、ライフワークとして諏訪の御柱祭を撮影する写真家の花岡凌さんが写真を通じて捉えようとしているもの。

花岡 凌
 

INTERVIEW THEME.01

北極でみつけた写真家という天職

昔から漠然と遠くの世界に憧れていて、学生の頃からバックパッカーで東南アジアを旅し、次第にノルウェーのロフォーテン諸島やカナダ、ニュージーランドといった圧倒的な自然を求めて旅をするようになりました。

旅行記・紀行文を読むのも好きで、荻田泰永さんの『北極男』という本を読んで北極への思いを募らせていた時に、ちょうど荻田さんが若者たちを連れて北極圏を歩く冒険旅を企画されているのを知って。それが2019年のことで、当時僕は26歳。名古屋の物流会社に勤め、種子島にロケットを運ぶという仕事をしていたのですが、会社も辞めて迷わず参加しました。そのおかげで写真の師匠である柏倉陽介さんと出会え、今があります。

花岡 凌

カナダ最北端のバフィン島を、ソリを引きながら600キロ歩くという旅で、19歳から28歳までの若者12人が参加していました。荻田さんを筆頭にカルガモの親子のようにみんな一列になって歩く中、帯同カメラマンの柏倉さんだけは時折離れたところから僕らのことを撮影する為自由に動いていて、その姿が僕の目にはカッコよく映ったんです。

こんなところに仕事で来れらるなんて、写真家って何て魅力的な仕事なんだろうって、素直に思ったことを柏倉さんに伝えたら、「じゃあ写真家になればいいよ」って言われて(笑)。それから弟子入りして、旅中は毎日歩きながら撮った写真を見ていただくようになりました。

ある日師匠からこんな課題を出されたことがあります。それは、「そこの岩をそこにあるように撮ってごらん」というものでした。簡単そうでこれがうまく撮れないんです。シャッターを押せば確かに岩は写ります。でも自分が感じているようにその岩を撮るというのは、まったく違うことだと思い知らされました。

写真のおもしろさを知ったのはその時ですね。今では撮りたいと感じた瞬間に、なぜそれを撮りたいのかを考える癖をつけるようにしています。ただ闇雲にシャッターを切るのではなく一度自分の中で言語化してみることで、撮りたいものがより明確になりますし、後から写真を見返した時にも、どういう意図でその写真を撮ったのかを人に伝えられますから。

   
花岡 凌

INTERVIEW THEME.02

諏訪という土地に生まれ育って

北極で忘れられない光景があります。幅2kmほどの氷河で削られた巨大な渓谷を前に、キャンプをした時のことです。夜になって何気なくその渓谷を眺めていると、こんな圧倒的な存在感を放つものが人類誕生より遥か昔から、誰にも見られることなくこの場所に存在している。そんなことを考えてゾッとしたのを覚えています。

でも、旅を終えて地元の諏訪に帰ってきたら、驚いたことに北極と同じような光景があったんです。僕が生まれ育った下諏訪側の湖畔から、諏訪湖を囲む山並みとその奥から顔をのぞかせる富士山を眺めていると、僕にはその形状が北極で見たあの渓谷と重なって見えて。考え過ぎかもしれませんが、幼い頃から無意識にずっと見てきた景色だったから、北極であの渓谷を見た時に強く心を動かされたのかもしれません。

改めて諏訪を見つめ直してみると、僕はこんなに自然豊かな場所で生きてきたんだなって気づかされましたね。そして僕が遠くに行きたがったのは、小さい頃に諏訪で感じてきた、初めて触れる自然へのドキドキを求めていたんだなって。

花岡 凌

諏訪には豊かな自然だけではなく、御神渡りという神事になっている珍しい自然現象や1200年も前から続く御柱祭があります。御柱祭は7年に一度開催され、奥山の大木を里に下ろして諏訪大社に立てる神事です。

2023年はこの御柱祭の年にあたり、僕もカメラマンとして参加させてもらったんですが、この御柱を僕のライフワークとして撮り続けていこう、僕にしかできない関わり方をしていきたいと決心しました。御柱は7年ごとに開催されますが、実際は常に動いています。祭りの翌々年から次の大木の選定が始まり、伐り倒した大木を運ぶための動線を整備して、次の2030年の御柱祭に向けて5年かけて準備されます。

僕はこれから、その準備も含めて御柱に関わるおじさんたちの姿を撮り続けたい。おもしろいことに、そもそもこの御柱が何のために始まったものなのか、なんで現代まで続いているのか、誰もその理由を知らないんですよ。1200年の歴史があるといっても、文献で遡れる限りの歴史なので、実際はもっと古くから続いているのかもしれない。

諏訪が御柱という文化をつくったのか、それとも御柱が諏訪という土壌をつくってきたのか。そういう文化が諏訪にはあります。

 
花岡 凌

INTERVIEW THEME.03

悠久の自然と御柱に通底するもの

御柱に関わるおじさんたちを撮ることも自然を撮ることも、僕にとっては同じものを撮っている感覚なんです。それはどちらも、抗えない何かに突き動かされて、無窮の彼方へと続いているということ。御柱を担うおじさんたちにしても、若い頃は誰もが御柱をやりたいと思って参加するようになったわけではないと思うんです。諏訪に生まれ育ったから、誰かがその役目を担わなければならないから、そうやって諏訪の文化に巻き込まれて御柱を担っていくわけです。

そんなおじさんたちのまとう緊張感や重圧、そして黒ずんだ肌と皺を僕は撮りたい。僕にとってそれは、氷河が長い年月をかけてつくりあげた渓谷を撮るのと等しく価値があります。

花岡 凌

大地を削る氷河も、元を辿れば一粒の雪から始まります。降り積もった雪が押しつぶされ、次第に厚い氷の塊となって押し流されることで大地を削り、谷をつくる。この雪もまた巻き込まれているんですよ。たまたま氷河の上に降り積もったことで、大地を削る氷の重みに加担していく。そんな“抗えないもの”を僕は自分の人生を懸けて撮っていきたいと思っています。そして僕もまた、氷河の上に降る雪の粒のように大きな流れに巻き込まれていきたい。

   

WSフォトレックダウンジャケットの使用感

Impression

花岡 凌

極寒の中、フィールドで日の出や星空など、「ここだっ!」という瞬間を待つ撮影が多いですが、このジャケットの素材は防風性に優れているため、強風の中でも安心感を持って撮影に臨めます。寒さに弱いカメラバッテリーやスマートフォンを、体温が伝わりやすい胸の内ポケットに入れておけるのも嬉しいですね。

それに、襟首のダウンのおかげで首周りがとても温かいし、着るシチュエーションを選ばないデザインなので、日常でも重宝しています。ポケットには交換レンズも収納できるので、自然の中でも街中の撮影でも、いつもの感覚でレンズ交換やバッテリー交換ができ、撮影に集中できるのはとても魅力的です。

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フォトレックダウンジャケット着用
フォトレックダウンジャケット カーキ

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「5 Nature Photographers」

「目を奪われるような美しい風景」や「極地が生む厳しい自然環境」、「動植物の織り成す生命の躍動感」などをカメラに収める写真家たち。彼らが魅了された世界や、撮影のバックストーリーなどを「WSフォトレックダウンジャケット」の使用感と共にお伝えする全5回の特集。

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